【世界初】シネマカメラでの宇宙撮影に成功 風船を使った上空28,450mからの地球と宇宙の撮影

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2014年7月20日にシネマカメラ(ブラックマジックデザイン社製:Blackmagic Pocket Cinema Camera)を世界で初めて近宇宙圏(28,450m)まで打上げ鮮明な映像の撮影に成功しました。


これまでは、巨大に膨らむことができる風船にヘリウムガスを一定量充填し、パラシュート、アクションカメラ(Go Pro社製カメラ等)および位置情報を発信するためのGPSを搭載した発泡スチロール製の撮影装置(以下機体)をその風船から吊るし、風船を空に打ち上げることで撮影を行っていました。

機体は打上げ後、約90分で最高点に到達、気圧の低下により風船は体積比にしておよそ80倍に膨張して耐えきれなくなり破裂、その後落下し、パラシュートが開き安全に降下、その間の映像を撮影するという仕組みです。

今回の撮影でシネマカメラを採用するにあたり、機体およびパラシュートはすべて岩谷圭介自身が、従来モデルを一新し、設計し直しました。一方で制作にあたっては、従来と同様、ホームセンターで入手できる材料を揃え完成しました。

打上は人口密度が低く、事故の危険性が少ない北海道十勝平野で行われ、回収もまた十勝平野で行いました。打上げ地点から落下地点までは直線距離で約18kmでした。

シネマカメラでの撮影の成功により、宇宙と地球の映像はより鮮明となり、一方新機体はブレに影響を受けにくい安定した結果をもたらし、高画質で美しい映像を撮影することが可能となりました。

今回、その画像を一般公開することで、民間、個人での宇宙開発のレベルの高さと、手に届く美しい宇宙の映像を広く配信していきたいと考えています。

楽曲提供 :  ONE Hundred MONTBLANC(ex MONTBLANC)

 

動画解説

スクリーンショット 2014-08-28 07.20.51

一番初めのシーン、これは私が機体の落下予測地点近辺にやってきたときの映像です。

落下先は十勝平野で人工物が周囲数十キロに何もない場所です。

GPS座標を頼りにやってきても、中々見つけることが出来ません。過去に回収地点まで行ってみても、藪の中で機体を失ったことがありました。GPSが場所を示しているというのに、10m以内の場所にあると分かってもみつからない、これはとても悔しいです。

過去の悔しい経験から、現在は機体に電子アラームを搭載しています。音が鳴っていればGPSの誤差分を補正してくれて、簡単に見つけることが出来ます。機体の発する電子アラーム音を頼りに機体を回収する時の様子です。

 

続いてこちらは、BMPCCを搭載した機体の打上準備の様子です。

スクリーンショット 2014-08-28 07.21.12

BMPCCは事前に多少設定しないと飛ばすことが出来ないので、直前に組み立てを行いました。

機体の素材はほとんどが発泡スチロールです。

柔らかい素材を使用することで安全性を高めています。さらに安全に対する装置は複数搭載されており、こんなに小さな機体でありながら、4種類の減速機構を搭載しています。

右に写っているボンベはヘリウムガスが詰まっています。このボンベがとても大きく、重たいので輸送にはトヨタのハイエースをいつも利用しています。これ以外の車では輸送しにくいです。

後ろに写っている女の子は打上で同行した方の娘さんです。打上は終始楽しそうにしていて、私としてもとてもうれしかったです。

 

スクリーンショット 2014-08-28 07.21.36

今回の風船は最大直径8m程度まで膨らむものです。

上空に行った時に8mになるように、地上での大きさを設定しています。

なので、打上前は直径1.5m程度の大きさしかありません。

空に放ち、高度を上げていくにつれ、徐々に気圧が下がっていきます。

そのため、上昇していくと、風船は巨大化していくのです。

 

スクリーンショット 2014-08-28 07.21.53

風船の打上シーンです。

空に放てば後は上空までの宇宙撮影旅行のはじまりです。

宇宙撮影は空に放つだけ、原理はとても簡単です。風船がどのような旅をするのか、簡単に解説も行っておりますので、『簡単すぎる風船宇宙撮影の原理』をご参考ください。

原理自体は簡単ですが、それを安全にかつ確実に行うためには様々な困難があります。この辺もまた何度も失敗して、なんとか形になりました。

 

スクリーンショット 2014-08-28 07.22.04

空高く舞い上がる風船。

この日の天候は曇り。全く青空の隙間も見えませんでした。

しかし、風船の目指す先は宇宙。

雲のない空間です。曇っていても美しい映像をきっと撮影して帰ってきてくれるでしょう。

 

スクリーンショット 2014-08-28 07.22.39

十勝平野は見渡す限りの大平原です。

延々と広がる農地。

日本で最も安全な場所で打上を行っています。

なお、この日のこの時間帯は風船の周囲を飛ぶ航空機は存在しないので、対航空機への事故の可能性は完全にゼロです。

地上の安全、そして空の安全へ十分な配慮を行い打上を行っています。

安全性についても詳しく検証した上で実施していますので、

 機体の安全性についての説明

人に当たったらどうなるの?

航空機への安全について

等のページをご参考ください。

スクリーンショット 2014-08-28 07.23.01

風船は上昇を続け、雲を抜け、青空へ。

曇りから晴れになる瞬間はなんともすがすがしいものです。

 

スクリーンショット 2014-08-28 07.23.22

高度をぐんぐん上げて、上空10000m近辺へ。

マイナス48.5度の極寒環境なので、フィルターに曇りが出てきてしまいました。

映像に曇りが生まれることはこの機体が初めてではありません。昔の機体で何度となく経験して、悩んで、やっと解消できるようになりました。

解消できるはずの曇りがなぜ、生まれたか。その理由はBMPCCの構造をいまいち理解していなかったから。このBMPCCを初めて使ったというのが理由ではありますが、気付くことも充分できたはずなのに!と、回収してから後悔です。

映像を見てから、「ああ、これは当たり前に曇るよな」と納得しました。過去の失敗と同じ轍を踏むとは何とも愚かですが、新しい装置を使用すると、たまにやらかします。惜しい事をしました。

 

スクリーンショット 2014-08-28 07.23.46

曇った水分は極寒の外気によって冷やされ結晶化します。網目状になった結露、冬場の北海道の窓ではよく見ることができます。この高度での外の気温はマイナス55度。北海道がいくら寒いと言ってもここまでは冷えません。

結晶が邪魔であまり景色が見えないのがもどかしい限りです。こういう失敗をする度に、次はもっときれいに撮ってやろう!と思うのですが、本当に思い通りに撮れることは今のところありません。

風船の旅は過酷です。私自身もまだまだ旅の途中のようです。

 

スクリーンショット 2014-08-28 07.24.33

一度凍ったフィルターの氷が解けました。

 

スクリーンショット 2014-08-28 07.24.47

水分が極限まで凝縮しました。

六角形の光が美しいです。

スクリーンショット 2014-08-28 07.25.24

最高高度に到達しました。

映像は曇ってしまいましたが、こんなこともあろうかと(真田志郎風)

過去の曇りの失敗から、最高点に着くころには曇りが解消されるのです。初めから曇りが生まれないように作ればよかったのですが、一応結果オーライです。

フィルターの曇りは完全に解消され、美しい宇宙と地球が写りこんでいます。

 

下に見えるのが北海道の大地です。

打上地点の帯広は曇っていましたが、雲の合間から札幌や富良野・旭川が見えますのでこの日この時間帯は晴れていたんですね。

スクリーンショット 2014-08-28 07.25.56

この映像で雲の切れ目から覗く大地は、苫小牧周辺です。

雲がなければ本州・青森・盛岡くらいまでなら見渡すことができます。

理論上はこの高度からなら600㎞遠方までみる事ができるんです。

 

この後バルーンはバーストして落下をはじめます。

そのまま落とすとあまりに危険なので、大型のパラシュートが搭載されています。このパラシュートは単にデカいだけで、工作教室で小学生のお子さんたちにも作ってもらっているパラシュートです。素材も同じ。違いがあるとしたら、すこしゴツく改良していることくらい。

大型のパラシュートは落下と同時に確実な方法で展開され、十分に安全な速度まで減速して着地できるように設計されています。確実に開かないと危険一杯なので、これに関してはかなり気を使いました。万が一開かなかったとしても、別の減速装置が動いて、パラシュートほどは減速しませんが、安全なレベルで落ちるようになっています。

 

スクリーンショット 2014-08-28 07.27.03

落下予測地点に向かい、耳を澄まします。落下地点は十勝平野の小麦畑の中でした。

耳を澄ますも、音が聞こえない。結構焦りました。この小麦畑の中にあるのは確実なのですが・・・・

 

スクリーンショット 2014-08-28 07.27.17

しばし探し発見。

装置内部を確認すると、宇宙から帰ってきたときの大気圧によって発泡スチロールがつぶされたことによって、アラームが通電しなくなっていました。これは次回に持越しの課題です。

手に持っている白い球体が撮影装置、白い布が破裂した風船の残り、そして透明な物体が大型のパラシュートです。

上空約30㎞からの帰還にも関わらず、カメラもレコーダーも無傷で、再利用可能な状態でした。撮影装置はとても柔らかい発泡スチロールでできていますが、安全性の証として、落下の際の発泡スチロールの損傷はありませんでした。そのくらいゆっくり落ちてきたんですね。

 

注意事項

以下の注意事項を読むと委縮してしまうかもしれませんが、今回使用した機材は知識なく打上するにはあまりにも危険ですので、このように記載させて頂きました。今回の装置またはこれに類する構造の装置の打上は絶対に真似しないでください。

このシネマカメラ(BMPCC)宇宙撮影は物理学の正しい知識と、安全な機体設計方法、そして風船による宇宙撮影を知り尽くしているからこそ可能な試みです。

安易な模倣は重大な事故を生む可能性があります。この重量物を安全に設計を行わずに打ち上げると人を殺傷したり他人の財産を侵害する可能性があります。

なお、この取組は日本の国内法を順守した上で、必要な機関に通達を行ったうえで実施されています。また、高い安全設計とリスクマネジメントを行い、十分な金額の賠償責任保険にも加入した上で実施しております。

 

注意事項への補足

以上のような注意事項を書きましたが、宇宙撮影を絶対にしないで、と言いたいわけではありません。むしろ逆です。風船を使った宇宙撮影をより多くの人が出来るようになり、多くの人が自分自身で宇宙に触れることができる世の中になってほしいという想いを持って活動しております。

軽いアクションカメラ(Gopro等)やトイカメラを使用した宇宙撮影であれば、適切な助言さえあれば、リスクも低く安全な打上が可能です。安全に誰でも挑戦できるようになることを願っています。だからこそ、事故が起きないように広がっていってほしいのです。

宇宙撮影をしてみたいという人たちを応援しておりますので、バルーンで宇宙を撮りたい!という方は技術的なお問合せからご連絡ください。

 

今後の目標

今後、さらに美しい宇宙映像撮影の為に新型機を開発し、打ち上げ、撮影を継続してまいります。

その他、撮影した映像をもとに、プラネタリウムを使ったバーチャルリアリティの作成や、16Kの高解像度映像の撮影を計画しており、もっと宇宙を身近に感じられるようなコンテンツ制作も開始してまいります。

一方、次なる目標として深海の撮影も目指しており、宇宙撮影で培った映像技術を転用することで、これまで誰も見たことがない新しい世界を映し出すことを狙っています。

今後ともに風船宇宙撮影をよろしくお願いいたします。

 

協力

Creative Direction by Masaru Ishiura (TGB lab)

Shot and Editd By RAITANK

Music by ONE Hundred MONTBLANC(ex MONTBLANC)

Still photo by Tsubasa Fujikura

Special Thanks to System5 , Atomos Japan

 

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About Author

私は日本人で初めて、独力で宇宙開発を成功させました。私の行っている風船宇宙撮影を通して、より多くの人に、宇宙をもっと身近に、そして夢はすぐそこに広がっていることを実感してもらいたいと思っています。

2件のコメント

  1. 初めまして。札幌で細々とフリーの映像クリエイターをしているBunderという者です。
    以前から岩谷さんの活動は知っていたのですが、今回BMPCCを打ち上げたという事を知って初めてこちらの訪問させていただきました。

    安全性に対する考え方や熱意、宇宙にかける情熱に脱帽です!スゲェ!
    色々と事細かに過去の活動のことも書かれているようですので、時間のある時にじっくり読ませて頂こうかと思います。
    陰ながら応援しています!

    • 初めまして、Bunderさん!
      応援してもらえるなんて、とてもうれしいです。感動です。ありがとうございます!

      これまでできたことを書いていましたが、これからは失敗した事、想定外だったこと、改良した事をたくさん書いていきたいです。
      ドジで間抜けな話も結構あるかもしれませんが、これからもよろしくお願いします!

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