宇宙撮影の安全性について

ふうせん宇宙撮影は世界一安全な宇宙開発の手法です。

日本国内は海外と異なり、人口密度が高く、飛行する飛行機の密度も海外よりずっと高いため、海外で行われているスペースバルーンの模倣で打上げを実施するのは極めて危険です。ふうせん宇宙撮影は岩谷圭介が独自に開発し日本国内での打上げに最適化された宇宙撮影方法です。世界一事故の可能性の高い日本で開発された世界一安全な宇宙開発方法です。

打ち上げた風船は、一定時間後に必ず破裂して、撮影装置は必ず落下してきます。超高高度からの落下なので、隕石か何かが落ちてくるかのようにご心配されます。結論から申し上げますと、私の制作している機体は十分に安全を考えておりますので、危険性はありません。とはいっても、根拠がなくては信用に足りませんのでご説明いたします。

衝撃とは

とても根本的な話から出発しますが、そもそも衝撃とは何できまるのでしょうか。

ぶつかる速さ、重さ、形状での違い、それとも落下してくる高さ?

色々と考えが浮かぶかもしれませんが、科学的(物理学的)に衝撃はたった3つの要素で検証できます。

速度・重さ・やわらかさの3点です。

速さとは

GOPR0378.MP4_000087545速さとは、今回の検証の場合、つまり落下してくる物体の落下速度です。速度が速ければ速いほど衝撃が大きく、遅ければ遅いほど衝撃は小さくなります。直感的に受け入れやすいかと思います。

さて、落下してくる物体の落下速度は、地球に空気がなければ落下してくる高度によってきまります。しかしながら、地球には分厚い空気の層がありますので、大きな空気抵抗をうけます。空気抵抗を受けると、落下してくる物体は一定以上速度を出せなくなります。

その最たる例として、雨粒です。例えば上空5000mで生成された雨粒は、もし空気がなかった場合、地上に達するときの速度は、時速1200kmにもなります。しかしながら、大気摩擦が加わり、実際の地上での速度は時速20km程度まで原則されています。

空気抵抗がある場合は、落下の高さと、落下の速度は関係がなくなります。

私の制作している機体もまた、雨粒と同じように空気によって、十分遅い速度まで減速します。そして安全に落下、着陸するようになっています。

重さとは

2014y06m25d_080803414重さとは、落下してくる物体の重量(質量)のことです。運動する物体は、軽ければ軽いほど安全です。同じ速度の野球ボールにぶつかるのと、大型トラックにはねられることを考えてみると、直感的に理解できるでしょう。時速100kmの野球ボールで死ぬことはないでしょう。多少こぶができることはあるでしょうが。しかし、時速100kmの大型トラックにはねられた場合、生存できれば奇跡です。生き残れたとしても後遺症が残るかもしれません。

撮影装置を含んだ機体の重さはわずかに250gしかありません。このような軽い物体は相手に与える衝撃は極めて小さくなります。

柔らかさとは

2014y06m23d_141546758柔らかさとは、落下してくる物体が小さな力で壊れやすく変形することができるかということです。当然のことですが、柔らかい方が安全、固い方が危険です。

全力で投げたた豆腐を人にぶつけ殺傷することは極めて困難ですが、同じ速度の鉄球でしたら容易です。もう一つ例を出しましょう。同じ速度の軟式野球のボールと硬式野球のボールだったら、グラブで受け止めてどちらが痛いかは、キャッチボールをしたことがある人は容易に想像がつくことでしょう。

私の制作する、撮影装置を含んだ機体は発泡スチロールでできています。とりわけ柔らかい発泡スチロールを使用しています。ホームセンターなどで商品として売っている、至って普通の発泡スチロールです。非常に柔らかく、ぶつかった時の衝撃はとても小さいです。(物理学的には物体の停止までの接触の時間が長い方が安全であると説明すべきですが、物理を学んでいない人にもより分かりやすい説明にするため、やわらかさとして説明しました)

機体の安全性の検証

例として、少々物理学的に衝撃を計算します。単位は無視して頂いて結構です。

1.時速140kmの野球ボール140gが何かにぶつかるときの加わる力が、56kgf
2.手で投げた時速60kmのソフトテニスボールがぶつかったときに加わる力が、0.5kgf
3.今回打ち上げる装置が何かにぶつかるときの力が、0.5kgf

 

機体の落下はキャッチボールのソフトテニスボールがぶつかる衝撃と大差ありません。ソフトテニスボールをキャッチボールして遊んでいてもけがをすることはありえません。どんな打ちどころであったとしても死亡させることは不可能です。撮影装置を積んだ機体も同程度の衝撃しか持っていませんので安全です。

また、物体の持つ運動エネルギーを考えることによって、どの程度変形したり傷付けたりするかを知ることができます。先程の例をそのまま使うと、

1.時速140kmの野球ボール140gの持つ運動エネルギーは、106J
2.時速60kmのソフトテニスボールが持つ運動エネルギーは、4.17J
3.今回打ち上げる装置の持つ運動エネルギーは、11.8J

エネルギーは野球ボールの10分の1、ソフトテニスボールの2倍程度。

このエネルギーは自身の変形にも使われるので、やわらかい物体である撮影装置を積んだ機体では、相手に与えるエネルギーははさらに何分の1にもなります。

 

蛇足:パラシュートについて

なお、蛇足ですが、印象で安全性を語ることはできません。例えば、パラシュートを使うと安全だ、と言うのは根拠がない議論です。パラシュートは付けるだけで安全になる魔法の布ではありません。

十分な計算を行い、安全に設計したパラシュートでなければ速度が下がらず危険です。パラシュート以外でも速度を落とす方法は沢山あります。そもそも、パラシュート自体、空気抵抗を受けて落ちるための道具です。他の方法で十分な空気抵抗を受けていれば、不要な場合もあります。

パラシュートは速度を落とすという命題に対しての十分条件ではなく必要条件にしか過ぎないということです。撮影装置が密度が小さく軽い物体の場合、パラシュートは開かないことが多く、不確かで頼りなく危険なものすらあります。

パラシュートがあれば安心、と盲信し、検証もせず物体を落下させる方が遥かに危険で向こう見ずな行いです。安全性の観点から最も安全な装置開発を行っています。