最近、全天球カメラという変わった撮影ができるカメラが流行ってます。全天球ってなんぞ? と説明するより画像を張ったほうが分かりやすいので、まずは画像を↓
Full on Spring in Miike Park, Fukuoka – Spherical Image – RICOH THETA
これはリコーから出ているシータというカメラを使用して撮影した写真。シータは全天球を撮影するために造られたカメラなんです。あたかも自分が桜の中にいるかのような撮影。一番最初にこれを見た時の感想、「うぉう、なんだこれ!」 それから、次に出てきた感想は、「全天球で宇宙を撮ったら自分自身が宇宙に行ったかのような撮影ができるんじゃ?」
私の夢は宇宙に自分自身が行ってみたかのような体験をすること。『のような』ってなに?と思われることでしょう。その通り、自分自身が体験しないということです。なぜかというと、極度の高所恐怖症で臆病者なので、風船に乗って宇宙なんて怖くて耐えられません。でも宇宙は好き、空の景色は見たいんです。人が宇宙に何回もポンポン行ける時代でもないですし、私だけが宇宙を見てきても宇宙を身近に共有することに繋がらないので、風船での宇宙もやっぱりいいものだ、というとちょっと立派な理由にも聞こえます。兎も角、宇宙を体験してみたい! そんな想いから全天球をやってみようを考え始めたのでした。
とりあえずリコーのシータというカメラは全天球の撮影が出来ることを知りました。まずはこれについて調べてみることに。風船の飛行時間はおおよそ150分。この時間の間動作させることができればいいんです。バッテリーの持ちもは常温で2時間ちょっと大丈夫っぽい。上空の環境で十分持つか怪しいラインです。それから撮影できる容量です。シータには全天球写真を1200枚くらいは撮影できるっぽい。5秒間隔で撮影して上げた場合、シータの動作時間は、5×1200=6000秒=100分 これでは時間足りない・・・
破裂シーンを撮影しようと思うと5秒インターバルが効いてきます。破裂はほんの0.1秒程度の出来事なので、5秒間隔だと写らない可能性が極めて高いです。全部を映すことができないばかりか、一番肝心の最高点での破裂シーンが撮影できません。とても便利で上手くまとまっているカメラなので、「いいな、使ってみたいなー」と「宇宙で使うのには向かないよね、無理っぽい??」の間で揺れ動いていました。
そんなある日であったのがリコーの技術者の前鼻毅さん。北海道でシータの開発に携わっているそうです。シータを宇宙撮影で使う際の悩みを相談したところ、「シータを宇宙に上げてみたい! 何とかなるんじゃないかな。」ということで、theta gose to space projectが始まったわけです。私にはシータの難しいところを変えることはできないのですが、そのあたりはプロの前鼻さんの力によって解決。まずはデータを取るために第一回の打上を実施することにしました。
ふうせん撮影装置の工作風景 fusen ucyu project theta gose to space #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA
折角なので準備風景もシータで撮影。宇宙撮影には使いそうにない道具が並んでいます。とりわけ気になるのはミシン。これはパラシュートの強度を上げるために使用しています。
ふうせん撮影装置の打上前の風景 #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA
風の良い日を選んで前鼻さんと理想の打上ポイントに移動。風船を膨らませて実験準備です。やっぱり人と一緒に実験するのは楽しい! もっとたくさんの人と宇宙撮影を一緒にしたいです。
thetaでの空撮 空がきれいです。 – Spherical Image – RICOH THETA
空飛ぶシータ。ちょっと雲の多い日ではあったのですが、きれいです。いい天気に感謝です。装置を必要最低限で超小型に作成したので、写真にはほとんど機体が写りこんでいません。小さく作るのに必要なものも徹底的に切り捨てました。わずか120g程度。この写真を見て分かるかとは思いますが、今回のこだわりはハウジングを付けないこと。付けると美しい写真にならないので、ハウジングなしで動作するだろうということで装置を作りました。
風船で大空へ – Spherical Image – RICOH THETA
シータはさらに飛び、上空10,000mへ。しかしここで想定外の事態が。何故かシータが停止。この後30,000m超まで上昇し続けたのですが、データはここまで。宇宙撮影が出来ると思っていたのですが、とても残念です。 宇宙写真がないとさびしいので、別方式で撮影した宇宙の全天球映像を張っておきます。
上空35000m近辺で撮影 地球っぽい #theta360 – Spherical Image – RICOH THETA
これは上空35,000m近辺で撮影した画像。風船が破裂したので、無くなってしまっています。本当に宇宙にいるみたいな写真です。シータでこれが撮れれば良かったんだけど。悔しい!
さて、何で止まってしまったのでしょう。そもそもの停止した最大の要因は、普段打上前に行っている成層圏環境テストをしなかったこと。今回はかなり急な日程だったので「とりあえず飛ばして試験してしまえ」という発想だったので、試験の結果動かないのが分かったのですからまぁ試験的には成功、撮影的には失敗です。肝心の停止の原因ですが、最低限の装備しか付けなかったので推測することしかできません。推測の域を出ませんが、恐らく低温になりすぎて停止したのではないでしょうか。他のカメラで大丈夫だったので油断しました。地上で再現実験をして、しっかりと調べ尽くさなくてはいけません。これから冬がきますから、実験の時間はたっぷりあります。今回の問題にしっかりと向き合って解決しなくては。しかし、これはこれで1つ収穫です。
もう一つ収穫があったのは、シータのカメラ性能を成層圏の入り口で試すことが出来たこと。雲の下ではきれいに撮影することが出来ているのですが、上まで行ってしまうと白が飛んでしまってきれいな写真になりませんでした。この高度から上での撮影はさらに明るい場所と暗い場所の差が大きくなります。もっと白が飛ぶことが予測されます。これは構造上致し方ないといえば、そうなのですが、私としてはもっときれいな写真を撮りたいわけです。円周魚眼だからいけないんです。複眼方式にすれば大分よくなるはず。うーん、シータ君、難しいっす。
現行のシータでは撮影できる写真に限界が感じられるので、複眼方式の手法を本気で開発しつつ、噂にある新しいシータが発売されたらしっかり実験をしてまたトライするのが一番良い方法かもと思っています。
しかし全天球は素晴らしい。入っていく感が最高です。こういうコンテンツを沢山作っていきたいです! こうご期待!