日本で個人が風船で宇宙を撮ることがどうして難しいのか 大きな5つの理由と4つの解決方法

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つい先日、イッテQで風船を使った宇宙撮影をやってましたね!

アメリカまで行って、現地で実績のある人に依頼して打上、撮影をしたそうです。

テレビ局で、なぜわざわざアメリカまで行ったかというと、番組の趣旨的なことはおいて、日本国内で打上をすることが非常に難しいからです。

けれども工夫次第でなんとでもなることなので、ぜひ日本国内で、日本人が日本人の手で、と思ってしまいます。

さて、なぜ日本国内だと難しくしているのでしょうか。その4つの理由を説明します。

 

1.日本の国土は狭い

日本の国土はアメリカなどに比べるととても狭いです。

打ち上げた風船は平気で100km~300km流れます

日本国土で仮に東側に200km流れると、どうなってしまうのでしょうか。

図にしてみました。

2枚目の日本地図を西側に200kmずらして配置しました。

1枚目(図で見ると右側)の地図上で、2枚目(図で見ると左側)が重なっている場所でなくては風船を陸地に落とせません。

同じ座標上で、1枚目が打ち上げ地点、2枚目が落下地点というわけです。

例を挙げると、

1.札幌からの打上なら陸地に落とせます。落下地点は帯広あたりでしょう。

2.秋田なら、太平洋上に落下、回収不可能。

3.新潟も太平洋上に落下し、回収不可能です。

4.大阪なら静岡周辺の陸地に落とせるでしょう。

と、仮に東に200kmのケースを検証しました。

これだけで見ても、日本でどれだけ困難かよくわかるかと思います。

 

2.風は気まぐれ

1では東側に200km流れると、限定した条件でお話ししました。

しかしながら、風は気まぐれで、北東にずれたり、南東にずれたりします

例えば、南東にずれた場合、先程の例で大阪は大丈夫でしたが、今度は日本海に落ちます。

本州は金沢、富山、福井のほんの一部を除き、軒並海に落下、回収不可能です。

風はかなり短いスパンで変化します。

半日違えば全然違うこともよくあります。

午前中なら東に流れるはずだったのに、午後には南東に流れる、なんていうこともよくあります。

こんなにずれると、国土の狭い日本では極めて困難になります。

 

3.落下地点が、無人の平野でなくてはならない

落下先が陸地であるだけでも、とても大変なのは1、2の説明でご理解いただけたかと思いますが、陸地でも山岳地帯に落下した場合回収は不可能になります。

また、都市に落とすわけにはいきません。

事故を起こしてしまっては大変ですので、だれもいない、安全で無人の平地に落とさなくてはなりません。

この条件をクリアする土地が日本にどれだけあるのか、考えただけでもかなり難しいことが分かります。

日本の陸地に占める山林の面積は7割

先進国でトップです。

限りある陸地のほとんどすべては都市です。

落下地点に選定できる地点はほぼありません。

2013年9月29日追記 一目で分かる海外との比較画像を追加しました

 

4.申請に関する問題

天候の条件だけでも困難な日本国内での打上ですが、さらなる困難があります。

それが、航空法をはじめとする打上に関する申請です。

日本国内で風船の打上をするにあたり、必ず申請を必要な省庁に提出しなくてはなりません。

申請は、打上地点と、打上日時を限定して、約2週間前に出さなくてはならないのです。

2で説明した通り、風は気まぐれ、どこに流れ着くのか分かりません。

明日の風がどうなるのかすら分からないのに、2週間後を予測しなくてはならない。

これは不可能なことを行わなくてはならない、ということです。

打ち上げ地点を選んで申請したとしても、風向きが悪ければ打ち上げても絶対に回収できないので、見送らなくてはなりません。

申請は打上の都度行わなくてはならず、その度時間がかかります。

いい風が吹いてるから、さあ午後から上げようというわけにはいかないのです。

 

5.空港が近くにあると許可がおりない

日本は国土面積の割にとても空港の数が多いです。

風船の打上は空港が近場にあるとできません。

また、風船の飛行経路に空港自衛隊がある場合もできません。

落下地点が飛行機の航路上だと、やっぱり許可が下りません。

そんなわけで、成功しそうな場所でも、許可申請が下りないという理由で不可になる場合も多いです。

 

以上5つの理由が、日本国内での風船の打上を極めて困難にしています。

こんなにも困難な条件下ですが、私は2013年、4度打上にチャレンジし、4度すべてにおいて成功しています。

与えられた条件は困難ですが、工夫次第で回避できます。

ではどうやって解決しているのかをご説明します。

 

解決策1 正確な予測飛行経路を算出する

申請にしても、地理的な要因にしても、飛行経路が正確にわかっていれば、安全に回収できます。

私の行っている飛行経路の予測の誤差は5キロメートル以下

回を追うごとに正確になっています。

落下予測地域は円状ではなく、線上であるため、かなり限定された地点めがけて落とすことができます。

どうやって算出しているのかというと、なかなか説明が難しく、経験則です。

 

解決策2 リアルタイムの飛行経路追跡

打ち上げた風船をリアルタイムで追跡することが可能です。

そのため予想外の事態が発生しても対処することが可能です。

なにより、追跡できるのは楽しいです。

 

解決策3 落下地点を複数選択できる

装置を改造することで、落下地点をどこでも好きな場所を選べるようになりました。

数百キロの範囲の最も安全に、最も確実に回収できる場所を選べます。

そのため、200km流れてしまう日であっても、120km先にちょうど良い平野(申請していた平野)があればそこをめがけて落とすことが可能になりました。

このことにより、かなり高い回収率を誇っています。

 

解決策4 北海道の広大さ

なにより北海道の広大さに助けられるところがおおきいです。

多少手違いや想定外のことが起きたとしても、北海道の広大さがすべてをフォローしてくれます。

やはり、風船の打上をするなら北海道が一番です。

とはいえ、最近は予測も正確になりましたので、本州でも安全に打上ができるでしょう。

地元福島でも打上をしたいと思っています。

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About Author

私は日本人で初めて、独力で宇宙開発を成功させました。私の行っている風船宇宙撮影を通して、より多くの人に、宇宙をもっと身近に、そして夢はすぐそこに広がっていることを実感してもらいたいと思っています。

2件のコメント

  1. 高校一年生でスペースバルーンの打ち上げをしたいと思っているものです。
    一度学校の企画でオーストラリアに行く機会があります。(修学旅行ではないです。約二週間ほど滞在します)その時に打上ができるように準備を行っているのですが、オーストラリアの法律などの関係で打ち上げは可能でしょうか?
    また、3月中旬に行くため、オーストラリアでは秋ごろだと思うのですが気候的な要因でに打ち上げはできるでしょうか。
    質問が多くて申し訳ないです。お返事いただけると嬉しいです

    • かわさきさま、コメントありがとうございます。
      オーストラリアでの打ち上げは、私からの意見としてはやめておいた方がよいと思います。
      理由は3つあります。
      1.法律関係が日本と異なりますから、自身で熟知する必要があります。現地の管制官とやり取りも必要で、向こうの言語で書類の提出や報告をしないといけません。
      2.外国人がなにかトラブルを起こした場合、大ごとになりやすいです。何かあった場合、帰って来れないことがあります。
      3.現地の危険生物や危険植物に対する知識がありません。命の危険があります。土地に対する理解も足りず、これも危険が伴います。
      以上の3つの問題点を学校の先生と一緒に話し合ってから、実際に実施するかどうか今一度考えてみてください。

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